◆東京大学田無演習林見学会聴講記◆

〔今日の見学会は、リアルの復活!!! 新型コロナのため、オンライン開催が2年続いていたが、やっとウィズコロナのリアル見学会。いざ、自宅を原付バイクで出発。

見学会の場所はといえば、いまは西東京市となっている旧田無市。市街地を疾走すること半時間で、武蔵野の面影を残す林が見えてきた。あった、あった、「附属演習林 田無演習林」の無垢大板の表札付き門だ。集合時刻に間があるので、しばらく付近を走っていると「東京大学田無キャンパス」の立派な門が。えーっ、こんなところにキャンパスあったの! そうこうしているうちにそろそろ良い時刻になってきた。「田無演習林」の門をはいると、林の中に白亜のセミナーハウスが。ここが第一部の会場だ! 第二部の林内見学も楽しみぃー。〕

 


第一部:林長の石橋先生による講義

 

1.講師石橋先生のご専門

森林計測学、森林経理学。いわゆる造林学とは少し異なる。

〔工学部工業化学科出身の筆者には、想像しにくい内容だ。。。。。〕

森林経理学の「経理」とは、元来、ものごとを秩序立てて考える・使うということ。

〔会社の「経理部」とはだいぶ違うねぇ〕

 

2.田無演習林の歴史

1929年、駒場にあった旧農科大学と本郷弥生にあった旧制一高とがキャンパスを交換。広大な駒場から、やや手狭の本郷に引っ越したため、農学部の機能の一部を田無に置いたことが始まり。農学部の演習林は、北海道・千葉・秩父など、田無を含めて7カ所。中でも田無は、最も面積が小さく、最も地価が高い。

〔面積最小といっても8ヘクタール。東京都の市街地だものそりゃ高いわけだ。冒頭の赤門技術士会長浅見先生のご挨拶によると、東京大学の保有敷地の内、99%が農学部。そのほとんどが、これら演習林だ。〕

午前中に弥生の農学部で講義、昼休みに移動して午後は田無演習林で演習、というようなカリキュラムが組める貴重なロケーションだ。

一方、周囲の住民は、この演習林のことを「都会の真ん中にある緑のオアシス」と呼ぶけれど、砂漠の中に水辺がぽつんとあるのと違って、もともと全面緑だったところに宅地化が進んで、演習林が残ったというだけ。

 

3.石橋先生の森林への思い

森林とは、食料、燃料、材料など恵みを受けてずっと使い続ける存在。いまはやりのサステナブルだが、森林経理学の世界では400年も前から、森林に人間が計画的に手を入れてまもり育てるというサステナブルを実践している。

一方中世のヨーロッパでは、森林とは貴族が鹿をハンティングするための広大な施設だった。

〔日本でいうなら、江戸時代 お殿様の鷹狩りかな?〕

森林をかたちづくる「木」とは、成長するもので、カエデなど、3年で2倍に伸びる。だから森林は「放っておけば良い」というわけにはいかず、「気持ちの良い森林」にするためには、手がかかるもの。

たとえば、お花見に人気の桜ソメイヨシノ。みな、クローンとして植えられるから、一斉に植えたものは、時期が来れば一斉に寿命が来る、倒れる。行政が危ないからと切ると、「なぜ切った! 折角の花見が台無しだ」と怒る住民。だから、一度に植え替えるのではなく、毎年少しずつ若い木に植え替えていけば良い。

〔なんとなく、会社で言われる人材育成に通じるなぁ。。。〕

 


第二部:林内の見学

 

1.セミナーハウス

〔まずはセミナーハウスを外から見学〕

向かって右半分が昭和7年、左半分が翌昭和8年それぞれ建設のしゃれた平屋。各演習林の建物のなかで、元東大総長の設計によるのはここだけ。セミナーハウスのすぐ脇にセコイヤの巨木があって、ハウス側に倒れないか心配。これは常緑樹だが、似た名前のメタセコイヤは落葉樹。

 

2.マツ

松はもともと強い木で、土の少ない岩山や砂地でも育つ。他の木を取り尽くした後に松だけが生えているということで、松の山は「その周辺地域が貧しい」の象徴と言われてきた。

だが、現在森林の松が減少している。主な理由は①カミキリが媒介する松枯れ病の蔓延、②人が他の木々を使わなくなったことにより太陽が射さないと成長しない松が育ちにくい。

 

3.ヒノキ

実は、日本のヒノキにはヒノキチオールをほとんど含まない。多く含むのはヒバなど。

一方、木材としての木曽檜の産地では、許可のない伐採は大罪。昔は「ヒノキ一本首一つ、枝一本腕一つ」と言われていた。ヒノキだけでなく、それに似たサワラ、アスナロ、ネズコ、コウヤマキも全て許可無く伐採することがご禁制となっていた。なぜか? それは、ヒノキ密伐採者の「あ、これヒノキですか? てっきりアスナロだと思って。」の言い訳を禁じるため。

〔あー、昔から悪人とお上とは、知恵比べだったんだね。〕

 

4.ハンカチノキ

田無演習林の2大アイドルのひとつ。枝に一斉に可憐な花を付けることから人気が高い。4月中旬に公開する予定。毎年、その時期の見学者がとても多い。

 

5.スギ

スギの雄花がたわわに。スギ花粉症の方には恐縮だが、以前はなかった症状なので、森林に携わるものとしては「スギ花粉症」ではなく、「ディーゼル排ガス症」と読んで欲しい。。。

〔超花粉症の筆者。ゴーグルにマスクの完全防備にもかかわらず、雄花を見るだけで、鼻がむずむず。。。。〕

 

6.World Wood Day 記念樹

2020年3月にWorld Wood Dayを日本で開催する予定であったが、新型コロナのため中止となった。日本の関係者で、せめてもと1年後の2021年3月に6本の木を記念として植樹した。

 

7.ヒトツバタゴ

通称「なんじゃもんじゃの木」で親しまれている木。2大アイドルのもうひとつがこれ。

〔ハンカチノキとヒトツバタゴの木がアイドルとは、先生方の森林愛を感じる。。。。〕

 


〔林内の見学はこんな感じ。

写真中央の白マスク無帽のお姿が石橋先生。聞く者を引き込む話術は、最高! さすが東大の先生〕

 

第三部:質疑応答

 

Q1.7つある東大の演習林の中で、面積は田無が最小と聞いたが、地価総額の最大は?

A1.ダントツで田無が最大。

  〔恐るべし、東京都!〕

 

Q2.森林を経済的な面から維持する仕組みは?

A2.基本的には、使いやすく、成長の早い木を植えることだが、木が生長する間に経済情勢が一変してしまうことがある。従って、森林の管理は慎重さが必要で、次の時代を考えた「使える木」を植えることが大切。

 

Q3.いまも、はげ山が残ってしまっている地域があるのは、なぜか?

A3.土と水の問題。畑など二つが揃っている所は、放っておけば必ず森林になる。現在のはげ山はこれらがないためのところが多い。

 

Q4.「富士癒やしの森研究所」隣接の山中寮で、かつて宿泊時に下草刈りをやらされた覚えがあるが、そのような義務は田無にはないのか?

A4.演習林として職員が下草刈りを行っているので、訪れた人に対するそのような義務は、ここ田無にはない。

 

Q5.森林を対象とする研究は時間がかかるので、研究テーマの継続や引き継ぎはどうしているのか?

A5.何はともあれ、考えずにひたすら決められた調査を続けることが習慣になっている。「これは業務だ」と。(笑)

 

〔最後に、くだんの東京大学田無キャンパス本館に移動して、参加者の記念撮影。

「やっぱり、リアルの見学会は良いなー」と帰路についたのは筆者だけ?〕

 

(文筆: 技術士 萩野新)